竹の油抜き

大分のある先生の工房へ、竹の油抜き作業の見学にお伺いしました。
なかなか見ることの出来ない仕事なので、とても勉強になりました。

一般に竹細工では山に生えている竹を、伐採してすぐに使うことはあまりありません。
農家で使う昔ながらの竹籠(青物)をつくる竹職人はそのまま使いますが、竹に含まれる養分が残っていて、長期保存がきかないので、すぐにひごにする必要があります。
青物は、香りと鮮度が命。
生野菜のようなものですね。

近くに竹林がある場合はよいのですが、なかなか難しいので、多くの竹職人は製竹業者から竹を購入します。
この竹は、竹に含まれる油を抜いて、天日で干した白竹(晒竹)です。
こうすると何年も保存できます。
クラフトの竹籠を「白物」というのは、白竹を使うからですね。

竹の油を抜く方法は、湯抜き(お湯に苛性ソーダ、ソーダ灰を少し入れて煮る)と火抜き(火であぶる)の2つがあり、今回見学した方法は昔ながらの火抜きです。
火抜きの方が、艶が出ますし、硬めに仕上がります。
本当に惚れ惚れとするような艶です。

2017.8.27. 補足
苛性ソーダは劇物指定されていて、扱いに注意が必要です。
特に濃度。
ソーダ灰(炭酸ナトリウム)なら苛性ソーダよりも扱いやすいのでお薦めです。

20182.2.補足
ソーダ灰の濃度は、水の重量に対して0,5〜2%の重さ。
100Lの場合、100×0,5%=500g
竹の太さによって濃度を調整します。
抜けが悪い時は、濃度を上げましょう。

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工房の外に立てかけてある、油を抜く前の青竹。
2ヶ月ぐらい陰干しした状態です。
伐採してすぐに油抜きをするわけではありません。
また、あまり水分が抜けすぎても、油抜きに時間がかかるので、2ヶ月ぐらいがちょうど良いそうです。


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油抜きの作業風景。
下から熱を加えて、ゆっくりと竹の油分を出して拭き取ります。
直接火があたると焦げてしまうので、円形の筒の中を通して熱を加えます。
あたりにぷーんと甘い香りが。


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油が抜けて、色が変化してゆくのがわかります。
4メートルの竹1本の油抜きで、約1時間。


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節に油分が残りやすいので、竹の棒で取り除きます。
この作業をしないと、天日で干す際にむらになります。
これだけ丁寧に竹を油抜きする工房は、日本にもあまりないと思います。

2017,8,27 補足
京都の銘竹屋さんでは同じように油抜きをしていると思います。
表皮の美しさが勝負の世界ですから。
竹工芸の分野で、火抜き方式はあまり聞かないのは、竹ひごが固くなるというデメリットもあると思います。
竹ひごに負荷を掛ける場合は、固くならない湯抜き方式が良いでしょう。
油抜きをしないで青竹を使用するのも1つの考え方です。
長期保存はできないですが、すぐに竹ひごにするなら柔らかいので使いやすいでしょう。
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油を抜いた竹。
山で日光にあたっている部分は、すこし白くなっていますが、天日で干せばムラなく美しい黄金色になります。


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作業場の竹を立てかけるところには、わら縄が巻いてあります。
竹に傷がつかないようにですね。
まだこの段階では表面が柔らかいので、傷がつきやすいのです。


これから天日に1ヶ月ぐらい干して、ようやく白竹の出来上がり。
長い時間をかけて竹を作っていることがわかります。
本当に時間のかかる仕事なんですね。

こうした火抜きの方法は、とても手間がかかるので、行う人がいなくなりつつあります。
でも、残してゆきたい技術です。
いつか自分も、竹をこうして作ってゆきたいです。

by first-nakatomi | 2010-05-24 23:01 | open process
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