作品の終わり方

どこまで手を加えて、どこで終わるのかというのはとても難しい問題です。
作品をどこでよしとするのか。

作品と商品は分けて考えるべきだと思います。

商品の場合は、顧客と価格をある程度絞ることができるので、その制限が逆に製作しやすくなります。
とくに、どこまで手を加えないで商品価値を上げられるかということが求められます。
よい商品なのに割安感を感じるものはやはり売れますね。
豆腐かごがいい例です。
ひご取りを極限まで省力化していますから、あれだけの価格競争力があります。
いいかごで、価格も安ければ言うことないですもんね。

竹細工の場合、もともとが手間がかかるので、よいものを作ろうとすればするほど価格が高くなりがち。
そして売れにくくなるという悪循環。
とくに海外からの輸入品が多くなればなおさら価格の問題は重要です。
漆や金工なんかも同じ状況だと思います。
アルヴァールトアールトが言っていました、「ものを作る時に、たくさんの矛盾を、いかに調和させられるかが重要だ。」と。
課題ですね。

話を元に戻して作品の場合ですが、商品と違ってより重視されるのが「美しさ」だと思います。
でも、どこに「美しさの力点」を置くのかは人によって様々。
力点の置き方でどのように仕上げるかが変わってきます。

そして、「finish」に近づけば近づくほど、作品の出来栄えに影響を与えることになるので神経を使うことになります。
完成度のある作品は、最後の力の入れ方がすごいですね。
じゃあ、どうすればよいフィニッシュに持ってゆけるかということですが、私がとっている方法は、「時間を置く」ということです。
「深夜に書いたラブレターは、朝見ると恥ずかしい。」と同じ。
作品を作っていると、どうしても自分のの思い入れが強いために客観的に見られなくなってきます。
独り善がりの作品になりがちだということです。
作りすぎてしまうんです。
様々な要素を詰め込んでしまって、かえって焦点がぼやける。
クドイ作品になる。

それを避けるために、ある程度作ったところでしばらく放置しておくとよいでしょう。
ある朝起きて、作品がよくなければ、やり直さないといけません。
逆に時間を置いても、その作品がよければ、いい作品ができる可能性が高くなります。
締め切りが迫っている時で、寝かせておく時間がなければ、「昼寝をするーー作品を見直す。」ことをするだけでもずいぶん違ってくると思います。
時間がないからといて、勢いに任せて仕上げてしまって後悔したことが何度もあります。
勢いが作品のパワーを生むこともありますが、見ていてしんどい作品になりがちですね。
その反省から、今は仕上げに近づくにつれて、極力寝かせる時間を取るようにしています。
結局はそうした方が完成度の高い、評価の高いよい作品ができます。

自分の制作の仕方は、自分で試行錯誤して会得するしかないんですけど、私はそのように思っています。
by first-nakatomi | 2009-07-04 22:20 | open process
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