日本工芸会系の展覧会に竹花籠を出品するときに、避けて通れないおとし(花を生けるための竹筒)。
昔はそれほど完成度を求められていなかったのですが,ここ10年はおとしで落選することもあるので注意が必要です。 竹ではなく漆の技術で作るものなので,おとしは必要ないと思いますが、約束なので仕方ありません。 昔は制作してくれるところもありましたが,今は自分で作る必要があります。 花籠の完成が見えてこないと、おとしも作りようがないので、西部工芸展や日本伝統工芸展などの展覧会に出品しようと思う人は、早め早めに準備しておきましょう。 漆の技術を身につけておけば、いろいろ応用することが出来ます。 もちろん、花籠を避けて、盛籠や箱物を作るという選択肢もあります。 それでは「おとしの作り方」を始めましょう。 (これは正式なおとしの作り方ですので,省略版は最後に紹介します。) 使用する材料、道具 ・生漆 ・黒呂色漆 ・地の粉(珪藻土を焼いて砕いた粉、生地の強度を上げる効用あり) ・砥の粉 ・ペーパー240番、耐水ペーパー1000番 ・下地用の刷毛(メジ用) ・塵取り刷毛(メジ用) ・上塗り用の漆刷毛(8分、5分、中塗り用の取っ手の長いもの) *中塗り用は漆刷毛に取っ手を自作 *漆刷毛は半通しで良い、筆おろしは丁寧に ・ヘラ3本(先が硬め、柔め、細い柔め) *ヘラ木を買って来て自分で作ります。 ・漉し紙(漆工屋さんで販売) 左から、ヘラ木・ヘラ4本・下地刷毛・塵取り刷毛・漆刷毛3本。 準備する道具を書くだけで、なんだかハードルが高い感じがします。 実際難しいので、先生の仕事を見て覚えるのが一番いいんですが。 1、まず、花籠の寸法に合う乾いた丸竹(孟宗竹でも可)を用意します 2、丸竹の表皮をはつります 3、表皮側をベルトサンダーかペーパーで綺麗にします 4、丸竹の内部の竹紙を取ります(サンドブラストかペーパー) 5、丸竹の上下の口の角の面を取る(小刀かペーパー) おとしの寸法の目安は ・竹の肉の厚みが約8mm ・節下の長さは8分〜1寸 ・高さは、花籠の縁下から6分〜1寸 とされていますが,全体のバランスを見て自分で判断しましょう。 6、下塗り(下地固め) 生漆を下地刷毛で全体に塗る①(生漆2:テレピン1)→室へ *塗りの大原則 下から上へ! *厚い溜まりが出来ると縮みが入るので注意! 太い黒い線が、漆を塗るところです。 下手な手書きですみませんが、これはおとしの断面図です。 7、乾いたらペーパー(240番)で全面空研ぎ 8、下地付け(蒔き地法)1回目 生漆をそのまま下地刷毛で塗る② 9、地の粉を振りかける(生地を固める役割を果たす)→室へ 10、乾いたら下地刷毛で余分な地の粉を払い落とす 11、下地付け2回目 もう一度生漆を塗る③(生漆2:テレピン1) (地の粉が付いているので少し薄めて塗る。) 12、地の粉を振りかける→室へ 13、乾いたら刷毛で余分な地の粉を払い落とす。 14、化粧さび付け(これは表面を滑らかにするための工程) 砥の粉をドーナツ状に広げ、中に水を入れて混ぜる(耳たぶより少し硬いぐらい!) →その半分ぐらいの生漆を、少しずつ混ぜながら加える(だまにならないように!) →出来ればラップにくるんで一日寝かせる →柔めのヘラ(刷毛でも良い)で④に塗る →室へ 15、④の空研ぎ(ペーパー240番) (この研ぎで表面の仕上がりが決まりますので丁寧に!) 16、地固め 生漆を刷毛塗り⑤(生漆1:テレピン1/4)→室へ 17、⑤をペーパーがけ(240番)→全体を水洗い→乾燥 18、⑥を黒呂色漆で塗る(ここからは漆刷毛)→室へ 外側は柔めのヘラで伸ばしてから刷毛で塗る (刷毛塗り 横すり→縦すり) 19、外側をペーパーがけ(耐水1000番)→全体を水洗い→乾燥 20、⑦を黒呂色漆を塗る→室へ 外側は柔めのヘラで伸ばしてから刷毛で塗る 21、⑧をーパーがけ(1000番)→全体を水洗い→乾燥 22、⑧を黒呂色漆で塗る→室へ *最終塗りなので、漉し紙で漆を漉す *塵刷毛に漆を湿らせて、塗る部分の塵を取る(軽く表面をなでる) *漆刷毛は使用する前に、漆を付けて硬めのヘラで漉し、刷毛の中の塵を出しておく(3回繰り返す) *ゴミを出すために漉した漆はおとしには使用しない 23、⑨をーパーがけ(1000番)→全体を水洗い→乾燥 24、⑨ を黒呂色漆を塗る→室へ (22と同じ) *外側はヘラで伸ばしてから刷毛で塗る (刷毛塗り 横すり→縦すり→上下の縁だけ小さい刷毛で横すり) *ホコリが付いていたら、針で取る。 (乾くとわからなくなります。) 完成!!!! 綺麗に漆を塗るのって大変でしょう。 神経使いますよね。 竹細工を選んで良かったと思います。 こうしてみると、漆のものが何故高いかがよくわかります。 本当は、これにもっと工程が入るのですから気が遠くなります。 省略版(竹の素材感を出した仕上げ方) 1〜6までは同じ 間を飛ばして 18〜24を朱合呂色で仕上げます。 おとしの表面をざっくりとはつると、ホコリも目立たないので神経も使わなくて済みます。 自分で一度制作して、他人のおとしを見ると面白いですよ。 おとしだけでもいろいろな発見があります。
by first-nakatomi
| 2010-03-07 23:41
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